不動産投資をすることで節税になると言われていますが、減価償却費を計上することで節税になる面があると言えます。
ただし、減価償却費は一生続けられる経費ではなく、一定のタイミングで使えなくなり、そのタイミングが不動産投資のデッドクロスになるタイミングと言われています。
今回は、不動産投資で起こるデッドクロスに関してワンルーム投資でも起こりうるのかに関して解説していきます。
不動産投資のデッドクロスとは?

本来デッドクロスは金融用語の移動平均線を元に、短期の移動平均線が長期の移動平均線を上から下に突き抜けて交差する状態となることです。デッドクロスになると、売りのシグナルなどと判断されます。
不動産投資におけるデッドクロスとは、キャッシュアウトを伴わなずに経費にできる減価償却費と、キャッシュアウトをするが経費にできないローン元金返済額が逆転するタイミングのことを指します。
減価償却費の考え方
不動産投資をする中で、減価償却費を計上できることが節税に繋がります。減価償却費とは、長期間使用することが見込まれる資産の取得費用を何年かに分割して経費として計上する会計処理の方法です。不動産投資においては、土地は対象とならないため、物件価格を土地部分と建物部分に分ける必要があります。
売買契約書や譲渡対価証明書などに土地・建物それぞれの価格が記載されていることもあります。
建物の法定耐用年数は構造や使用目的によって異なります。
・木造:22年
・鉄骨造(厚さ3mm以下):19年
・鉄骨造(厚さ3~4mm以下):27年
・鉄骨造(厚さ4mm超):34年
・鉄筋コンクリート/鉄筋鉄骨コンクリート造(RC):47年
詳しくは国税庁のWebサイトで確認するようにしてください。
デッドクロスの問題点
デッドクロスの問題点は、不動産投資の当初よりも計上できる減価償却費が少なくなり、結果納税額も多くなり、減価償却費以上に元金返済額が大きくなることで資金繰りが悪化することです。
実際にはキャッシュアウトをしていないが経費にできる減価償却費が少なくなる、もしくは無くなることで経費計上できる金額が少なくなるため、元金の返済を減価償却費で相殺するような形だったがそれができなくなります。経費にできる金額が少なくなるということで不動産投資の利益も増えるので結果として納める所得税が増えてしまいます。
ローンの元金返済とキャッシュアウトに見合う経費が計上できず所得税が増加し、納税によるキャッシュアウトが増え、不動産投資上不利になる状態となります。
ワンルーム投資においてデッドクロスは起こりにくい
ワンルーム投資においてデッドクロスは発生するかというと、実際には起こりにくいと言えそうです。
例えば、築10年のワンルーム投資マンションの減価償却費を見てみましょう。
まず、残存耐用年数(減価償却をできる期間)を計算すると、こちらになります。
47年(法定耐用年数)-10年(経過年数)×0.8=39年(残存耐用年数)
端数となる月数については、経過年数は切り上げ、残存耐用年数は切り捨てになることに注意してください。
物件価格(税込):3,000万円
消費税額:100万円
消費税率:10%
築年数:10年
残存耐用年数:39年
このケースの計算結果は以下のようになります。
建物部分の価格:100万円(消費税額)÷10%(消費税率)=1,000万円
償却率:0.026(償却率表にて確認)
減価償却費:1,000万円×0.026=26万円
ローンを3,000万円フルローン35年、金利1.65%で借り入れした場合の返済の内訳はこちらになります。
- 元本返済額:52,826円/月、年間約63万円
- 金利返済額:41,250円/月、年間約49万円
デッドクロスは減価償却費以上に元金を返済する状態のことを言いますが、ワンルーム投資の場合はRC物件で耐用年数も47年と長く取れることから減価償却費用がそもそも年間に馴らすと大きくないことやローン返済期間以上の減価償却期間を取れる事にもなります。
つまり、ワンルーム投資においてはデッドクロスは起こりにくいと言えます。
ワンルーム投資でデッドクロスが起こりうる物件
ワンルーム投資でデッドクロスが起こりうる物件としては、償却期間を長く取れない築古物件となります。築45年の物件の残存年数はこちらになります。
47年(法定耐用年数)-45年(経過年数)×0.8=11年(残存耐用年数)
ただし、築45年の物件であれば旧耐震基準物件になるためそもそもローン借り入れが難しくワンルーム投資においては実現しにくいと言えそうです。
現実的に起こりうるケースは築古一棟物件
不動産投資において、一棟物件の中でも築古木造物件や軽量鉄骨物件となります。
法定耐用年数は木造物件は22年、軽量鉄骨物件は27年となりますが築30年の物件であってもローンを借り入れして投資をすることができます。
法定耐用年数を超えた物件の残存年数の計算方法はこちらです。
耐用年数を過ぎた物件 = 物件ごとの耐用年数 × 0.2
木造物件の場合は、22年×0.2=4年(端数切捨て)
軽量鉄骨物件の場合は、27年×0.2=5年(端数切捨て)
耐用年数を超えた物件に投資をする場合には、短期に大きく償却することができるため節税効果が大きくなる分デッドクロスに注意が必要になります。
ワンルーム投資で気を付けないといけない減価償却
ワンルーム投資において、デッドクロスは起こりにくいと言えそうですが不動産会社によっては減価償却の知識を誤って身につけており間違った提案をしてくるため注意が必要です。
例えば、建物の付属設備の償却期間(耐用年数)は15年となります。不動産会社によっては、15年の償却期間を5年など短くすることで償却費用を短く提案をしてきます。
建物と付帯設備を分けて償却することは可能ですが、その分償却期間を超えるとデッドクロスに繋がるため注意が必要です。
デッドクロスの対応策
デッドクロスの対応するためにはいくつか方法があります。
・繰り上げ返済を行う
・償却期間を超える前に売却をする
・別の投資用物件を購入する
・余剰資金を蓄えておく
最も実践をしやすい方法が不動産投資で得たキャッシュフローを余剰資金として残しておくことです。余裕があれば繰り上げ返済を行い返済元本を減らしていくことも一つとなります。
また、デッドクロスになる前に物件を売却してしまうことや投資物件を増やすことで別の物件で減価償却を大きくとっていくことも一つでしょう。
まとめ ワンルーム投資においてはデッドクロスはそこまで気にしなくても良さそう
今回は、不動産投資で起こるデッドクロスに関してワンルーム投資でも起こりうるのかに関して解説しました。
ワンルーム投資においては減価償却期間を長く取れることもあり、現実的にはデッドクロスに陥る心配は少ないと言えそうです。
ただし、購入予定の物件がマイナスキャッシュフローなどであればデッドクロスの心配ではなくその物件購入をしても良いものかしっかり検討した方が良いでしょう。
提案を受けているワンルームマンションの購入するべきかどうかだけでなく、すでに買っているがサブリースを外したい、買った物件の入居付けが弱いため管理会社はこのままでいいのか、不動産投資ローンの金利をもっと下げられないか、等の中立な立場でご相談を承ります。
初回相談は無料ですので是非お気軽に相談してみてください。

